四季の移ろいが映し出す美しさ。木々と石が織りなす落ち着いた雰囲気。
ゆるやかに流れる時間。砂を踏む音がその静けさを教えてくれます。
そう、和風の庭には“静”という言葉がぴったり。日々の忙しさを忘れさ
せてくれる癒しの空間をたのしみたいものです。

●基本要素について
○和風の主庭には、大きく5つの要素があります。これらをうまく使い分けて表現づくりをしていきます。
 
庭の条件にふさわしい ───
樹木を選ぶ
土質・日照時間・陽当たり・近隣の環境などの諸条件を検討し、その庭にふさわしい樹木を選びます。
植える面積と役割により ──
木を使い分ける
庭木には、役割により主木・上木・下木と3つのタイプがあります。
主木…庭の中心となる木。マツ・スギ・ツゲなど
上木…樹木の大半を占める木。サクラ・ツバキ・サザンカなど
下木…主木、上木を引き立たせる木。ツツジ・サツキなど
周辺環境と季節に  ────
配慮すること
陽 樹…日当たりを好む木 陰 樹…日陰を好む木
常緑樹…常に緑を絶やさな
              い木
針葉樹…季節の変化が強く
              表れる木
 
石は和庭の重要アイテム。石の配置により美しさとスケール感が表現され、個性を演出できます。
石の役割と組み方の基本をおさえる必要があります。 
●石の役割を決める
主石…物理的にも雰囲気的にも大きく、
            イメージを決定する石。
副石…石組みのイメージをさらに効果的にする石。
添え石…主石に従属する石。
●組み方の基礎知識
 ・敷地の左右いずれかに重心を置く。
 ・庭の中心ではなく、周緑部に配置する。
 ・大きな石は1つか2つにとどめる。
 
全体に安心感を与え、庭の雰囲気をひきしめます。
●水はけのいい土をセレクト

土中に過度の湿気がたまるのを防ぐため砂質土、または畑土と川砂をまぜ、下に砂利をひいて水はけをよくする。
庭になだらかな隆起をつくり、水はけをよくする。
●あまり日の当たらない場所を選ぶ 長時間日光が当たるとなかなか育たない。
●湿度の調整 自然の湿度に任せておいて構わないが、うまく育たないときは夕方に散水する。
●通風防止 風で湿気をさらわれてしまわないように、生垣、竹垣を設置して風の通り抜けを防止。
 
雨などによるぬめりや、風による砂埃を防止します。庭の演出としても活用します。
最近では、海や波のイメージをつくる砂紋表現に人気があります。
砂や砂利は粒がそろっていて、その形も美しいものを選ぶのが基本です。場所とシーンにより、色も検討して、砂の使いわけをします。 落ち着いた庭‥・黒・茶褐色のもの
静謐な庭‥・白色のもの
 
庭全体に清涼感が漂う「なごむ空間」として大きな機能を果たします。しかし、池を設けるためには、ある程度のスペースが必要となります。
観賞目的にするのか、鯉や金魚などの飼育目的にするのかにより、使い方や設備が異なります。(※給排水のシステム、水質浄化のシステムなど、いずれも専門家のアドバイスが必要となります。)
 
和の庭をよりひきたたせるための、灯寵、蹲踞、玉砂利などを添景物といいます。
全体とのバランスを考え、効果的に使ってイメージを具体的にしていきます。
 
景観が単調にならないように、アクセント効果に使います。大きめでデザインの良いものを選ぶのが良いでしょう。

配置場所
基本的に照明としての役割をするものなので、「明かりとり」として自然になるよう配置します。
 
@□路 A出入ロ B庭 C回廊 D池 など
 
「蹲踞」とは身を屈めて(つくばめるとも言う)手を洗う、または口を濯いで体を清める場を意味します。和庭づくり、特に茶庭の基礎要素のひとつになっています。

配置場所
部屋から眺めが良く、中景くらいの場所が適しています。玄関わき、アプローチ周辺などに配する場合もあります。
 
手水鉢は、庭の雰囲気に合わせて選ぶことができます。
石の質感に合わせて 素焼きの表情を 丈の高いタイプも
 
蹲踞は7つの要素を基本に構成されています。
手水鉢を中央に配し、事前に前石、左に手燭石(てしょくせき)、右に湯桶石(ゆとうせき)で形をつくり、それらに囲まれた部分が“流し”となります。
その“流し”の排水口を隠すために水掛け石をおきます。
 
家全体を和風にまとめあげるフェンス機能として使用します。
高さもあるため、外部からの視線カット機能も保有しています。
最近は、メンテナンスが簡易な、アルミ製品の使用が多くなっています。
建仁寺垣 御簾垣
 
外部との仕切り、ゾーンの区切りに加え、風の通路となります。
湿気を払い、部屋の中に涼しい風を送り込みます。防風用・防砂用もこの原理です。
生垣に適した材木
@各地方の気候・風土に適したもの
A年間を通して葉のあるもの
B刈り込みや剪定に強いもの
C幹の枝もよく芽を出すもの
D下枝が枯れ上がりにくいもの
E葉が密生するもの
F病害虫がつきにくいもの
G生長が早く、樹勢が強いもの
生垣の規模による適正な樹木
高生垣(2m以上の生垣)に向くもの
中高垣(1m〜2mの生垣)に向くもの
低生垣(1m以下の生垣)に向くもの
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カシ・ヒノキなど
イヌマキ・ツバキ・サザンカなど
イヌツゲ・ユキヤナギ・クチナシなど